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18時ぶんってことにしてくれよ!どうも、ブログがこみあってるらしくて投稿できずしょうがないのでクリスマスまんが描き始めてました(クリスマスは終わったよ!)ほんとはクリスマスまんがの冒頭をはさんでクッションしてから長編の『星』をはじめたほうが雰囲気出るかなと思ったんですがもう時間経っちゃったからいいやな!!
そんなわけで今回は長編ネタ断片『星』です。なおも言いますが25日の10時~12時ぶん更新ぶんに長編の冒頭があるのでまだのかたは読んでくださると幸せです。
終盤がはじまります。せっかくなのでここで『塔』をもう一回読んでみてもいいかも。
・『星』(夢と現実精神となんとかの狭間のなんとかにて)
静かなところだった。青いようで黒いようで、学校であり町並みであり自分の部屋だった。長い長い海岸線の波打ち際にしゃがみこんでいた。静かにつんと寒い風が吹いていた。
星がきれいだった。
そこでばらばらになったたくさんの積み木たちを、何度も元通り繋ぎ合わせようとこころみた。きれいな城のような形を覚えていた。でも今まで何がどうそれらを繋いでいたのかを、おれはなぜか忘れてしまっていた。何度も何度も、手当たり次第に寄せ集めて固めて元通りのものに戻そうとした。しかしうまくいくことはなかった。
どこかのパーツが欠けたようでもないのに、記憶にある元見たお城と同じような形に積み上げても、そのそばから軽い音をたてて血みたいな色の波に総崩れになった。その音はとても耳障りで心細くて、でも誰かが遠くで歌う声のようでもあった。崩してしまっては積み上げ、また崩しては積み上げた。崩れるたび積み木は割れて細かくなり、しまいには砂のようになって足元の血海水に重く湿った砂とも区別がつかなくなった。
砂は重くもさらさらとして、時々それぞれの粒がきらりきらりと光った。足元の暗い砂と混じったマーブルが、織物の美しい模様のように見えた。砂を梳く手が見えた。おれの手だった。海にも砂にも風にも混じらず、輪郭が解ける様子もないくっきりとした手が、青い薄闇の中に白く在った。
自分の肌を、初めてまともに見たような気がした。手は皮ばかり硬く薄っぺらで頼りなくて見るからに卑怯そうで、でも確かな骨組みと血肉だった。
これが、おれか。
貧相な手を空気が芯まで冷やした。冷たさを感じる神経が通っていた。傷んだ指に血さえにじんでいた。おれの手はあくまでおれの手であって、何にも融けていかなかった。おかしくて笑うと肺が痛んでむせ込んだ。星が凛と光って照らしていた。孤独だ、と思った。
きれいなマーブルを描く砂をきれいな何かにするかぐちゃぐちゃの台無しにしてしまうかを、おれが決めるしかなかった。あるいはその模様をよく仕分けして、前のお城に似たようなものを作ることだって本気でかかれば可能かもしれなかった。でも光る模様があんまりきれいでわくわくしたので、あの人に見せたいと思った。おれがぶち壊して、初めて作ったものを、あの人にあげたいと思った。たとえばそれが踏みつけられるんだとしても、両手で掬う砂をきれいだろうと伝えたかった。
星が瞬いた。
パチン!
まぶしい朝方の教室で小田桐の背中を見ていた。
「小田桐!」
長い長い影の方向へ床を蹴った。信じられないほど体が軽かった。しあわせなことがたくさんおこるような気がした。
小田桐の肩が悠然と動いた。
コマ送りのように小田桐は振り向いた。同じくコマ送りのように、駆ける空中でもっておれは身をすくませた。『小田桐がおれを見ている』。そう浮かんだが早いか長い影はするすると縮んで……。
一歩が床に着くまでにおれは小田桐の影から外に出ていた。真上からやわらかいスポットライトが照っていて、狭い影が足元にまとわりついた。小田桐の影も同じような面積しかなく、おれがすっぽりおさまるのはどうしたって無理そうだった。そのことと、こっちを見る小田桐から、目が離せなかった。
「嫌だ……」
小田桐はゆっくり歩み寄ってきた。あの独特なやさしい目でおれを見ていた。優しくて気高くて、いつか全部を焼いて清めるだろう目だった。
「嫌だ、小田桐」
おれを置いてどこかへ往ってしまうのだと思った。一人でも大丈夫だと笑うつもりなのだと思った。この砂を見てきれいだとでも言って笑って、おれを一人にするつもりなんだ。小田桐の歩みは止まらなかった。おれの目ばかり見て穏やかに笑んでいた。
「嫌だ!」
一歩前まで迫った小田桐の腕に掴みかかった。掬い持っていた砂が、足元にすべって広がった。小田桐は動じず、しょうがない、というような顔をして軽く笑う。掴んだ腕はなんだかさらさら光っていて、息を呑んだ。
「小田桐、嫌だ!どこにも行くな、一緒にここにいて!」
ただでさえ色の薄いような小田桐は、どんどん薄く透けていってるみたいだった。制服のはずの腕は細かい粒子の集まりみたいに無責任な触感になっていた。ぎゅっと力を入れたら、ますます透明に近付いてしまった。恐慌をきたして見開いた目が痛くて涙がぼろぼろ落ちた。足元の砂がすべって流紋から円を描いた。
「なんで?おれのことなんてどうでもいいか?ねぇ、おれのこと、このおれのこと忘れないで。おれには小田桐が必要なの、小田桐が、小田桐がいなくちゃ」
なかば透けた胸に顔を押し当てて必死で叫んだ。砂が、りんりんと小さな音を出していた。
「わかってる。」
小田桐はやっとものを言って、あやすように髪を梳いてくれた。砂みたいな指先から、りんりんと星の音がした。
「だから来たんだろう。」
砂がりんりんと擦れ合って、聞き取れないくらいの音まで混じってるみたいだった。りんりん、りんりん、小田桐とおれを囲んで円を描いたまま、砂は浮き上がって光った。もうほとんど小田桐は感じようとしなければいないというほどに薄まっていた。
駄目だ。
「だからって何だよ馬鹿!」
りんりん鳴る音の中、泣きながらめちゃくちゃに叫んだ。小田桐がいなくちゃ。小田桐がいなくちゃおれは駄目ンなる、小田桐を知らなかった頃の、この思いを知らないおれに戻ってしまう。嫌だずっとおれの前に立っていて、小田桐、怖い。指から空しく腕が消えて、胃の奥が凍った。
「大丈夫だ。」
一歩距離を詰める気配がした。耳に息がかかるくらい。小さな小さな影が触れ合って重なった。
抱きしめられていた。小田桐の腕がおれを抱きしめていた。どう息をしていいのかわからなかった。砂はりんりんいいながら輪をかいて踊っていた。だんだんはっきりするおれの影と、小田桐のうすずみ色の影が合わさって、おれの足に黒々と落ちた。
「小田桐」
「僕はここにいるよ。」
ただ声だけが残された。すべての砂が天球に躍りこんだ。砂が踊るせつない光を、おれは泣きながら眺めてすごした。それは郷愁の涙だった。ひたすらにうつくしい星の輪郭を探して空を見上げているだけで満足だったころへのおわかれの涙だった。
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影が重なり背中の姿ではなく「声」が残されます。よく耳を澄ませてごらんなさいってやつ。
自分自身が何者として生きることにするか……。社会の中での「位置取り」というのは、「皇帝」の力です。それを一方的な憧れで他者として分離してしまったことから、実は話は始まっていたのですね。本当はちゃんと「声」を自分の中から聞くことができていたのにね。
自分自身の意志でそれを望もうと選んだとき神様は振り返ってあなたとひとつになって、そしてもう影にかくまってくれなくなるでしょう。でもそこでやっといっしょにいることができるようになるんだよ。
ていう抽象的な話だけで更新ひとつ終わったよ!!
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