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クリスマス終わりましたよ!ということでまだまだ続きます(何がということでだ)ついでにほぼ毎年このサイト年末年始に、マリモの誕生日が29日でサイト開設が1月6日だからっつってサイト誕生祭やってるんですが、その期間もジャックして続けますよ!
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長編「風に立つ」ネタメモ断片のアップを続けます。なおも言いますが25日の10時~12時ぶん更新ぶんに長編の冒頭があるのでまだのかたは読んでくださると幸せです。
『悪魔』の続きから、『死神』につぐ二度目の死、『塔』です。風雲急!いよいよ終盤へ向けた転です。
・『悪魔』終わり主人公モノローグ
あいつが、おれをあわれんでくれているのだということを、ともすれば忘れそうになり、そうかと思えば恨んでもいる。
小田桐はおれが抱きしめてもなにも言わない。ただ黙って、身をかたくしている。眠るようにゆっくり息をかぞえて何かを待っている。おれが正気に返るのを数を数えながら待っている。たまに何も知らない手つきが背中や頭を撫でる。正気のときのおれを好きだと言って可愛がってくれる。そしておれが何かしでかす一定の時間は、たまのふわふわした手以外は行儀よく災難が過ぎ去るのを待つ。
正気のおれなんていない。
小田桐、おまえに『仕方のない不具合を抱えてしまった友人』はいない。あれはなにかたちの悪い霊が憑いてるのでも理性障害なのでもなく、おれがやりたくてやってることだ。おまえを掻き抱いて食い荒らしたくてしょうがないのを小出しに憂さ晴らししようという、姑息な、おれの手口だ。おれは正気じゃない!まったく正気だからこそ、いかれている。
いかれてるから、撫でられたりすると、思ってしまう。小田桐がおれを愛してくれている夢を。小田桐の肩口のにおいをかいでとろとろ目を開けたまま、おれはつい寝ぼけてしまう。寝ぼけたまま……他にもいろんなことを忘れてしまいそうだ。おれが小田桐に捧げたものや、明かしたこと、小田桐がどうやっておれの友達になってくれたかなんかを、どろどろに溶かして、小田桐の一部になってしまいそうだ。
小田桐、なあ小田桐。眠いんだ。おまえだけ見ていても眠気がまとわりついて払えない。おまえはそんなにまぶしいのにおれはぼやけて消えるような気がするよ。
起こしてくれ。なんとかして起こしてくれ。ひっぱたいても、ぶん殴っても、踏み付けたってかまわないから。眠気でおまえのことを忘れちまわないように。おれはこの眠気が気持ちいいんだか気持ち悪いんだか、もうわかんないんだ。
「たすけて、小田桐」
朝陽がカーテンの隙間からほそく左目にさしてきた。ベッドの外へ投げ出していた左手をわずかにゆるめて、鎖ごと持っていたものを落とした。鐘の音のように金属らしい音がしばらく部屋に残った。
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落ちて鐘のような音を鳴らしたものは『隠者』に出てきた壊れた蝶の懐中時計、止まった彼の心です。
衝撃で動くようになるほど簡単ではないけども。
・『塔』
ハルの目はきらきらとうるんで、まぶしげに細まった。うすく染まった頬に少し伸びた髪がひと房黒々とかかってひとつの飾りのようだった。木に花が咲いたようなかぐわしい姿だった。強く、澄んで、頼りなげな色彩と光。魅力でさえあるつややかな闇を、それをひらいた血と臓物をおそれず、そうまでしてなお何の後悔もなく自分を見上げてくれる鳥を、小田桐はもう無闇に恐ろしいものだとは思わなかった。
ハルは鳥なのだと小田桐は感じていた。
美しくて気高いつばさの、眼も爪も嘴も鋭い鳥が、自分の腕にとまっている。その大きな鳥が自分を傷つけることをおそれる必要はなかった。自由で美しくて、そして優しい鳥だ。やわらかい色をしている。
この白い鳥のためなら自分は喜んで血を流すだろうと、小田桐は目が眩む思いがした。そしてその肩を抱きしめた。鳥が翼を大きく広げて飛んでいくイメージが、一瞬頭をよぎった。それは天空の情景だった。
やっと、と思った。
籠も柵もとりどりに光る羽根飾りもない。
やっと君をみつけた。
「あ……」
ハルの目がぎりぎりと大きく見開かれた。
「……佐伯くん?」
小田桐が腕を解くと純粋な衝撃に光をなくした瞳は闇雲に動き、少しののちにやっと小田桐をとらえた。望むはずの穏やかな声で呼びかけられたのに、制御もなく強い非難の色さえ滲ませていた。しかし目が合わないような感覚を、小田桐はふと感じていた。
「あ……、あ、あぁ……!」
何か舞踏を舞うように、そのシルエットが翻った。
すっかり狼狽しきった表情だった。力の入らない膝が後ずさりにさえ沈みかけ、軽くよろめきさえして必死な様子で背を向けた。何か命を危うくするものから逃げ出すようにハルは小田桐から逃げていった。まるで叱られて泣くような顔をして。罰を受けた子どものように大きな目を揺らして。
小田桐はその鮮烈な残像を見ながら、腕に残った鳥の甘い気配を思い出していた。
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絵自体は旧作ですが。厳密にこのシーンというわけではないですが、こういう感じです。ギャラリーページでは「触れられたくない恋もある」とか書いたかな?
にせものの神様に眠らされそうになってた佐伯ハルくんに小田桐の愛が雷でパリーンです。『塔』というカードは占いでは最悪のアンラッキーカードと言われていますが、実はその徹底的な破壊は傲慢なバベルを「壊してくれる」神様の、罰というよりおめぐみの光なのですね。今更ですが「風に立つ」というタイトルの「立つ」は「たつ」、竜神が神鳴って光臨する夏の季語を示しています。
小田桐は小田桐で神様でも君自身でもなくて、真っ向から君を見てるよ。
次からはいよいよ『星』に『月』に『太陽』に、終盤ですね。幾度ものまちがいや破壊の果てのささやかなスタートです。
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